定力制御を可能としたボールバニシング工具の開発
定力制御バニシング加工を用いた均一な改質層の創成

機械製品の高性能化及び長寿命化を実現するには,引張強度・疲労強度・耐摩耗性・耐腐食性など様々な機械的性質を高める必要があります.このための加工法として,高硬度の工具を押し付けることで,通常の機械加工された工作物表面上に存在する微小な凹凸を塑性変形させて,平滑な表面を得るバニシング加工法があます.この方法により,表面粗さを改善できるほかに,材料表面に加工硬化層,圧縮残留応力層などを与えることができます.道路工事現場で見かけるロードローラの金属加工バージョンとなっています.
バニシング加工により得られる表面改質層の表面粗さ,硬度,残留応力などの表面の性質は様々の要因に左右されますが,その中で最も重要なパラメータはバニシング力です.従来のバニシング工具の多くは内蔵されたバネでバニシングピンを保持し,バネに与える予圧を調整することにより,被加工物への押込み力を決定していますが,バネの性能や被加工面の形状により,バニシング力が不安定であるので,均一な改質層を得ることが困難でした.
本研究では,バニシング加工の定力制御に注目し,バニシング力をインプロセスで制御可能なボールバニシング工具の開発を提案しました.さらに定力バニシング加工することにより,均一な表面改質層の創生を実現することを目標としています.
これまでのバニシング加工では,加工が始まる前にバニシング力を設定する必要がありましたが,本研究で開発するオンマシンバニシング力制御システムを利用することで,加工中のバニシング力を連続的に調整することが可能となります.これを用いて,自由曲面など複雑な表面を有する被加工物に対してもバニシング力をリアルタイムに補正する方法の確立を試みています.