金属と樹脂とを複合した高剛性・高減衰なパッシブダンパ「P-DACS」の開発
機械システムや建築構造物の剛性と振動挙動を制御する
機械システムの高度化に伴い,微小な振動が問題となっています.例えば,工作機械や産業用ロボットで生じる振動は加工精度や位置決め精度に悪影響を及ぼし.自動車で生じる振動は乗り心地を悪化させ,柔軟宇宙機の弾性振動などは機体の制御を困難にしています.また,建築構造物では,卓越周期の異なる様々な地震動によって破損や破壊が生じてしまいます.これら,振動が問題となる課題を解決するためには,振動抑制技術が不可欠となります.
従来の振動抑制技術では,柔らかい減衰材料(樹脂やゲルなど)を付加することで振動減衰性を高めてきましたが,剛性が低くなってしまうことが難点でした.また,チューンドマスダンパやアクチュエータを用いたアクティブ制振装置は,チューニングや設置が困難であったり,設備費が高くなるという難点があります.
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本研究では,特殊な剛性設計を施した金属構造体に高い振動減衰性を有する高分子材料を複合した,革新的なパッシブ構造体ダンパ技術(P-DACS, Passive-Damper with Anisotropic Composit Structure)の開発を行っています.このような複合構造体を形成することで,高分子材料の減衰性能を最大限に高めることができます.また,ダンパの用途や設置条件によって剛性や振動減衰性を広範囲にチューニングすることができるため,高剛性タイプや,高減衰タイプ,剛性と振動減衰性のバランスをとったバランスタイプなど,さまざまに設計することができます.

現在は,P-DACSの設計指針の構築や性能評価,実用化に向けたアプリケーション開発を実施しています.